医療関係者のかたへ 地域医療をもっともっと良くしよう

臨床研修医の声 先輩研修医からのメッセージ

平成19年広島大学医学部卒 清水 晃典 先生

(平成19~20年に当院で初期研修)

清水 晃典 先生公立みつぎ総合病院では「地域包括ケアシステム」のもとに保健・医療・福祉に携わる全てのスタッフの方々の熱い想いによって「あたたかいケア」が実践されています。そのような場での研修の中で、患者様の退院後の生活にも想いをはせることができ、地域の中で1人の患者様に対して保健・医療・福祉がどのように関わっていけるのかを直に感じることができます。

また、研修医に対しても病院全体として熱い想いを抱いてくださっていて、研修医のヤル気に答えてくださる雰囲気があります。自らのヤル気次第で研修プログラムがさらに補強されていくような、「手作りの研修」ができるのではないかと思います。
私自身、研修の中で、指導医の先生からだけでなく、コメディカルの方々、病院職員の方々、患者様から多くのことを学ばせていただいていると思います。検査、手技に関しても指導医の先生のもとに、やらせてもらう機会が多く、単なる見学で終わらず、一つひとつを自らのものにしていくことができる体制です。

私がこの病院を選んだ理由は、地域医療に興味があり、いろいろと調べていく中でこちらの病院の「地域包括ケアシステム」にたどり着きました。そして、実際に見学に来てみて、この病院で研修してみたいと思うようになりました。  
プライマリ・ケア、地域医療に興味のある方はぜひ一度、見学に来てみてください。みつぎ総合病院の熱い想いに触れることができると思います。

清水先生の論文が、地域医療Vol.46 No.4 p438-445に掲載されましたので、関係各位の許可を得て紹介させて頂きます。
「地域包括医療・ケア」を基本理念とする管理型研修病院での研修について

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[歯科] 平成18年広島大学医学部卒 西中村 亮 先生

西中村 亮 先生平成18年度広島大学卒、平成19年度公立みつぎ総合病院歯科研修医の西中村 亮です。

みつぎ総合病院歯科診療室では、乳児から高齢者まであらゆる年代の方を対象とした歯科診療を行なっております。活動の場は、診療室内での一般歯科診療に留まらず、尾道市御調保健福祉センターでの乳幼児歯科健診、保育所での保健指導、老健施設や特養の利用者の方を対象とした口腔ケア、さらには在宅訪問診療におよび、まさに地域に根ざした歯科診療を実践しております。病院内外の多くの職種の方と連携をとり、予防、治療、リハビリ、指導・教育を行うことによって、口腔機能の維持・回復・向上を目指した包括的口腔ケアを実践し、患者様の全身の健康が保たれるように日々取り組んでおります。

研修医もその活動に積極的に関わり、多くの患者様と接することができ、また、歯科以外の多くの職種の方とも行動を共にし意見を交わすことができます。指導医の先生方の熱心な指導の下、大変濃密な研修期間を過ごせております。

[後期研修について] 地域医療部 田中 佳人 先生

田中先生2年間の初期臨床研修を終えて、後期研修医として公立みつぎ総合病院にやってきました。病院だけではなく、在宅や施設での医療に興味があったからです。

3年目はもっと内科的なことを身につけてからとの配慮でほとんど病院での研修になりましたが、4年目からは、少しずつ在宅や施設での時間を増やしていただいています。

在宅や施設での人々の顔や表情は病院でのそれとは違い、当然といえば当然ですが、その人らしく生き生きしています。やはり医療も生活の一部であり、家を中心に行われるのが理想だという自分の考えを強くしています。

後期研修医という立場の中で(だからこそ?)結構わがままを聞いていただいて、当院における特色全体を網羅した研修が出来ているように思います。

緩和ケア病棟おやつの時間での風景
緩和ケア病棟おやつの時間での風景
緩和ケア病棟におけるカンファレンス風景
緩和ケア病棟におけるカンファレンス風景
緩和ケア病棟の患者さんとの散歩”ポーズ”
緩和ケア病棟の患者さんとの散歩”ポーズ”

歯科臨床研修医日記

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「地域包括医療・ケア」を基本理念とする管理型研修病院での研修について

公立みつぎ総合病院
清水晃典 丸山典良 菅原由至 林 拓男 向井憲重 山口 昇

〔要旨〕

著者は、出身地が過疎と高齢化の進む地域であることから、学生時代より地域医療に興味を持ち、過疎地医療について考える機会が多々あった。そのなかで、当院事業管理者の山口 昇先生の著書『寝たきり老人ゼロ作戦』と出会い、その理念や姿勢、そして活動内容を大変魅力に思った。

一年次に、まず、早起き、1日最低2回の診察、指導医との相談の仕方といった態度を身につけた。プライマリ診療を中心に内科・外科・救急を研修した。緩和ケア、NST及び褥瘡対策に参加し医師の役割を学んだ。2年次に小児科、産婦人科及び精神科を協力型病院で補った。1年目の研修で担当した患者については、1年以上の期間、退院後の生活を現場でフォローする機会を得た。医療依存度の高い症例も多く、在宅や介護施設の療養環境で各種サービスを利用して生活していたが、その姿にいきいきとした印象を持つことが多かった。そこにある人生を支え、そして満足を高めるのは、社会資源同士の“点と点”、さらにスタッフ同士の“点と点”を、時々の患者・住民ニーズに即応させて結びつける網の目のようなものであると感じた。また、彼らの社会的、身体的、精神的要因の変化によって求められる網の目は変容する。

地域医療におけるロールモデルを得たこと、プライマリ・ケアやチーム医療のための基本的知識・技術を習得できたこと、さらに医療・保健・福祉・介護を念頭に患者や住民に必要なサービスを住民目線で考える意識が芽生えたことが今回の研修の成果と考える。

はじめに

新医師臨床研修制度が導入され、今年で5年目を迎えた。本制度では、「地域保健・医療」研修が必須であるが、その内容は研修病院により差異が大きい。なかには、1ヶ月間のみの都市部の保健所研修もあれば、遠隔地にある協力型の地域中核病院でのプログラムもある。本科目の履修においては、研修指定病院での理解や協力先の諸事情により、目的や意義を見い出しにくい結果となることがあり、指導医だけでなく研修医の間にも本科目の必要性に疑問の声がある。また、将来的に過疎地域での診療従事を希望する研修医にとっては、「地域保健・医療」の問題を含め、好適な研修プログラムに関する情報が少ない。

地域医療を志す著者は、地域包括医療・ケアの実践を基本理念とする病院での管理型研修を選択した。本制度の理念に沿う診療態度、基本的知識・技術の習得に加え、地域住民と医療・保健・介護・福祉とのつながりの理解という「地域保健・医療」の本質的目的を達するには優れたプログラムと考えたので、その経験を報告する。

公立みつぎ総合病院における管理型研修

当院は、広島県旧御調郡御調町(現在は合併して尾道市御調町である)に位置し、医療圏域人口は約7万人である。御調町は人口約7880人(平成20年)、高齢化率31.4%と高齢化の進む地域である。病床数は、緩和ケア病棟や療養型病棟、回復期リハビリ病棟を含め240床である。

当院は、地域包括ケアシステムの構築と実践を通じて住民ニーズに即応する全人的サービスを提供してきた。病院敷地に保健福祉センターを併設しており、そのなかに在宅サービスの核となる訪問看護ステーションのほか、地域包括支援センター及び社会福祉協議会を含む。また、病院から4kmの位置に保健福祉総合施設を併設し、施設ケア、通所ケアおよびリハビリテーションといったサービスを提供している。

当院は平成15年に臨床研修指定病院の資格を取得し、新臨床研修制度以来、広島大学病院、川崎医科大学病院および尾道総合病院の協力型病院として「地域保健・医療」のため研修医を受け入れてきた。著者は、当院初めての管理型として平成19年に研修を開始した。

著者が履修したプログラムを表1に示した。1年次に、外科、救急・麻酔科そして内科の研修を行った。麻酔科の常勤医がおらず独立した救急部がないので、救急・麻酔科については、外科医師が指導医を担当した。2年次は精神科、地域保健・医療、小児科、産婦人科、選択科の研修となるが、精神科常勤医がいないので、本科を府中市立湯ヶ丘病院で研修した。小児科は常勤医師がいるが経験すべき症例数の関係で、尾道総合病院での研修となった。産婦人科も同じ理由で、同院で2か月、当院で1か月のプログラムとなった。2か月間の地域保健・医療については、当院、併設の保健福祉総合施設や保健福祉センターでのものが主であったが、近隣の保健所及び無床診療所での研修も経験した。

1年次は、外科研修から始まった。その初日に、外科部長より最初の1か月の到達目標が記されたチェック表を手渡された。そのなかに「静脈採血が速やかにできる」「胸写、腹単の読影ができる」といった検査、手技に関わるものから、「看護スタッフの顔と名前を覚える」「一秒も遅刻せず外科カンファに出席する」「一日2回は担当患者を診察する」といったように、主に診療態度に関わる項目が挙げられていた。緊張の連続であったが、日々、本目標のクリアを意識して研修した。まず、朝6時30分からの病棟採血で著者の業務は始まった。毎日6時前に起床し当院したが、採血しようといつもの病棟に着くと、すでに回診を始めた外科部長と出くわし焦ることもあった。休日関係なく毎朝8時に外科のスタッフ全員によるカンファレンスが始まった。ここではスタッフが担当患者の経過を説明することとなっており、それまでに最新情報の把握と整理が必要であった。当初は、担当患者の名前と病名を覚えるのが精一杯で、把握が不十分で治療方針に関する必要な検討がなされていない場合には、外科部長より叱責を受けた。毎朝のカンファレンスは多少きつくは思ったものの、その積み重ねのおかげで、患者情報の整理に掛かる時間は月単位あるいは週単位に短縮したと感じた。ともかく、これらの朝のルーティーンは、習慣として早起きと病院始業前の担当患者回診を定着させた。

外科研修において、消化器外科をはじめ、末梢血管や腹部大動脈瘤手術といった血管外科、乳腺、甲状腺、鼠径ヘルニアなど計70例の手術を経験した。宿便性のS状結腸破裂に対する緊急手術は、術野の臭気に涙ぐんだことを含め大変印象的であった。正直、糸結びは苦手だった。閉腹の最後に皮膚の縫合をさせてもらったが、時間がかかるので毎回申し訳なく感じた。周術期患者を診療するなかで、静脈注射、末梢点滴ルートの確保を習得し、消化管透視、腹部エコー、心エコーを時々させてもらった。奇数週の土曜の早朝から科内の論文抄読会があり、英語論文に触れる機会を得た。著者もNew England Journal of Medicineの1編を担当した。また、勤務時間後には、町内の居酒屋で単身赴任者の部長先生のお酒のお供させられることがしばしばであった。

外科部長がNST責任者ということもあり、週2回(水、木曜の午前11時)の定期のNST回診に参加した。症例検討の場において、スタッフから症例情報の提示が終わると、同部長からその管理計画を立案するよう問われた。はじめは、しどろもどろで回答できなかったが、そのうち場の空気も読みつつ部長に叱られない内容を言葉にすることができるようになった。大学では全く馴染みのなかった管理栄養士、言語聴覚士及び歯科衛生士といった専門職種と現場で意見交換することができ、個別的管理の実践について理解を深めることができた。また、外科が院内の褥瘡管理を統括していたので、毎週水曜午後の褥瘡回診にも参加した。著者は、電子カメラでの記録、計測、DESIGN分類評価及び洗浄処置を行った。大多数では、NST管理が同期されており、創の評価に応じて蛋白質負荷、微量元素補充といった調整を加えることで、緩やかであるが確実な手応えを感じることができた。長期の関わりのなかで、創の改善とともにADL回復や呼吸器系症状の改善をみることも稀でなく、栄養管理が正に全ての治療の基本のように思えた。

麻酔科研修は、実質的に外科研修と並行する形となった。全ての外科全麻症例において、麻酔導入、気管内挿管、維持及び覚醒に関わった。気管内挿管について、著者の不器用さもあり、期間中に単独で成功したことは少なかった。初めは、「緊張しすぎ」「体の力を抜け」とかよく指摘されたが、徐々に慣れていった気がする。

外科から救急・麻酔の6カ月間の期間中、月に最低6回は夜間の救急外来診療にあたり、common diseaseを診療する機会を得た。しかし、交通事故による多発損傷への緊急対応も少なくなく、多科横断的に機敏に連携する重要性を実感した。

続く内科では、消化器、循環器、呼吸器の分野別に2か月ずつ研修した。消化器内科では出血性潰瘍、肝硬変、胃癌の肝転移などの疾患を診ることができた。消化器研修中に、平日の午前に、時間が許す限り検査室に足を運び、腹部エコーや上部消化管内視鏡を実施や介助を行った。特に腹部エコーは指導医のもと1日最低4~5件実施し、外科の研修中に教わったエコー手技をさらに自分のものすることができたと思う。

循環器内科では、急性心筋梗塞、心不全といった代表的疾患を担当した。緊急心カテには毎回コールを受け、時に緊張のなかインターベンションの介助を担当した。他方、肺炎を契機に心不全に移行していく高齢者が多く注意が喚起された。つづく呼吸器内科では、肺炎、塵肺、肺癌などを経験した。脳梗塞後には、嚥下機能が障害され誤嚥性肺炎になることが少なくなく、NSTの関与も重要であった。また在宅酸素療法導入も経験した。

担当の消化器癌末期の患者が緩和ケア病棟に転棟することもあり、癌性疼痛管理の導入、チームによる精神・心理的支援を経験した。本人には勿論家族にとっても良い形で最期を迎えるために、多職種の協力が重要であった。

また、担当患者が退院後に訪問看護を導入する際には、併設訪問看護ステーションの看護師に同行し在宅ケアを経験した。看護師は、時々の病状、ADLレベルと本人・家族の意向をバランスさせて、療養環境全般を細やかに調整していた。患者・住民中心のケア展開の起点としてこのような努力が欠かせないと大変参考になった。

2年次には、残りの必修科の小児科、産婦人科及び精神科を協力型病院で研修した。小児、産婦人科については2か月ずつ厚生連尾道総合病院にお世話になった。同院は、NICUを有し地域の周産期医療の拠点病院として機能する。さらに小児科救急外来も運営しており、夜間の患者が多い。いわゆるコンビニ受診も散見され、小児科医療の抱える喫緊の問題に触れる機会を得た。同科では月4回、救急外来での当直研修を行い、小児科プライマリ・ケアの診療技術を訓練することができた。一方、産婦人科では2日に最低1度は分娩の呼び出しがあり、緊急帝王切開も数多く経験することができた。やはり、指導医の勤務状況は過酷であり、産科医不足に強い問題意識を持った。当院でも1か月間ほど同科の研修を行い、外来を中心に協力型病院で担当することが少なかった子宮脱や更年期障害を経験した。

精神科研修は2か月間、当院から車で45分北東の府中市立湯が丘病院で行った。同院は山間部にある単科病院であり、ここでは認知症高齢者の診療、躁うつ病や統合失調症の入院治療を主に経験した。また、統合失調症では、たとえ病態の安定が得られても、社会適合施設など地域資源の不足により入院期間が長期化する問題を抱えていた。

つぎに、地域保健・医療研修について述べる。これは3か月にかけて行ったが、その概要を表2に示す。最初1カ月間、当院の回復期リハビリテーション病棟、緩和ケア病棟、療養病棟での研修とさらに保健所研修を経験した。2か月目に併設老健・特養の複合施設である保健福祉総合施設と近隣の診療所での研修を行った。3か月目には在宅ケアの拠点の保健福祉センターに場所を移した。

以下に、順次、研修内容について説明する。

回復期リハ病棟では、主に専門スタッフの指導下に病棟患者のリハビリの介助、援助を経験し、さらに在宅移行前のカンファレンスに参加した。在宅生活の具体的イメージに基づくきめ細かなリハビリ計画は勿論、実施における心理的支援に裏打ちされたコミュニケーションの重要性を理解した。

保健所研修については、尾道市管轄の保健所に通い、1週間で地域保健対策に加え介護保険に関する行政の取り組みの講義を受けた。特に高齢者医療、地域包括ケアに関するものには興味深かった。つづく緩和ケア研修では、癌性疼痛管理の導入、チームによる精神・心理的支援を経験した。ケア・カンファレンスに参加し、多職種の関わり合いにより、ひとつのケアがなされている様子を見ていくことができた。療養病棟研修では、療養病棟が老健などの施設に移行する前段階として重要な役割を果たしていることを実感した。

2か月目には保健福祉総合施設での研修となった。広い敷地のなかに、老健、特養さらにリハビリセンター、グループホーム、ケアハウスなどが集約化されていた(写真3)。当施設での研修概要を表3に示した。介護や看護の体験をするだけでなく、医師としてカンファレンスに参加し、施設利用者の診察にもあたった(写真4、5)。さらに、介護関連の各職種の業務内容の詳細や職種間・スタッフ間連携の方法を学ぶことができた。

また、この2か月目に診療所研修を行った。当院より車で40分の三原市大和町にある大和診療所にお世話になった。外来業務においては、初診患者の診療に携わった。著者が排尿時痛と直腸診から急性前立腺炎と診断した患者があったが、この患者は総合病院に紹介したので、診病間連携を経験することができた。また、往診に同行し、在宅での患者診察とカルテ記載を経験した。1週間の短い期間であったが、診療所を拠点する医療のあり方について学ぶことができた。

3か月目は保健福祉センターでの研修であった。本センター(写真6)は、病院敷地の別棟に併設され、保健福祉活動(中高齢者対策、母子保健対策など)や健康診査事業を行うとともに、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターを含んで在宅ケア拠点として機能する。ここでの研修は訪問診療、訪問歯科診療、訪問看護、訪問介護への同行、乳児検診、健康相談、介護認定審査会、介護予防事業、特定高齢者事業、健康わくわく21(一般住民向けの健康に関する座談会)への参加などであった。地域住民対象の健康講話や、在宅看護・介護体験を行った(写真7、8)。ここでも、多職種の連携とパートナーシップが発揮され、各々の役割を明確にさせる意味でケア・カンファレンスが重要な機能を果たしていた。

地域保健・医療研修では、地域包括ケアシステムを構成する各部署において、スタッフ業務を体験実習し、専門職種の視点でシステムの意義を感じることができた。一方、住民生活現場では利用者の立場からそれを感じた。

またこの研修中に著者は院外の研修会、学会や院内旅行にもコメディカルのスタッフと共に行き、交流を深めていくことができた。連携を取っていく際にスムーズに進めることができる雰囲気をつくることができたと考えられる。また研修中もさまざまな場面で助けていただくことがあり、コメディカルの皆さんから勉強させていただくことが多々あった。

2年間の研修を通じて著者が体験した1事例を以下に提示する。

【症例】 83歳 男性
【既往歴】 脳出血、化膿性脊椎炎、対麻痺、不安定狭心症、冠動脈バイパス術、両下肢閉塞性
動脈硬化症、左大腿切断後、膀胱瘻造設後、人工肛門造設後、糖尿病
【生活歴】 若いときは農業と大工に従事した。現在、妻と長男夫婦、孫2人と同居している。
【要介護状態区分】 要介護4(平成20年4月)
【経過】 平成13年 脳出血、化膿性脊椎炎により、対麻痺を発症。
平成15年人工肛門造設術を施行。
平成19年4月 下肢ASOによる左下腿の皮膚潰瘍の進行を認めたため、左大腿切断術施行。嚥下機能検査にて嚥下障害を認めたため、増粘剤が必要となった。5月 在宅での訪問看護、リハビリ、福祉用具の調整を行った上で、退院。11月 肺炎にて緊急入院。入院後、抗生剤の投与で炎症反応は軽快。 臥床の際には痰の喀出が多く吸痰が必要となった。⇒家族への食事・栄養指導を徹底させ、自宅に吸引器を準備し操作の指導を家族に行い、在宅療養の準備を進めた。この際に薬剤師による服薬管理、管理栄養士による嚥下食の指導が行われた。
平成20年1月 多職種カンファレンスを行ったうえで退院。再び在宅へ。2月 再度肺炎発症し入院。入院後、抗生剤投与し肺炎は改善したがSpO2の低下を認めた。吸痰にても改善しなかった。⇒酸素吸入にて呼吸困難感が緩和した。⇒呼吸困難時にまず喀痰吸引を行い、改善なければ酸素吸入対応することとなった。退院前に多職種カンファレンスを行い、在宅酸素療法の開始を決定した。3月 酸素濃縮器の設置が完了。使用方法に家族が習熟したため、退院。

退院後は以下のようなサービスを利用され、ご自宅で安楽に過ごされている。在宅:訪問看護(1回/週)、訪問リハビリ(1回/月)、保健福祉総合施設:デイケア(3回/週)、ショートステイ(必要時)、みつぎ総合病院:外来受診(1回/週)、外来リハビリ(1回/週)

本症例とは、1年次の外科研修期間に関わりがあり、2年次の地域保健・医療研修で、その訪問看護やデイケアに同行した。そして、患者情報を上記のように、数年に渡る経過について、本人・家族の口述、カルテ、訪問看護記録、各種サービス(自宅改修など)記録、カンファレンス記録をすべて整理した。在宅療養の状況や各種記録から、病状やADLの経時変化よって医療、保健、福祉、介護の各種サービス様態が変遷することを確認した。また、そこに必要な連携はケア・マネジャーとかかりつけ医師が主導していたが、サービス内容の詳細について本人の希望と医療・介護上の要求の間に隔たりがある場合、決して押し付けにならぬよう相互の妥協が上手にされていた。まさにネットワークがその人にとって満足の高い療養を支え、生きがいに繋げているように思えた。

考察

「地域・保健医療」の研修前は、病院での診療と病院に併設された老健や特養などの施設サービス、訪問看護、訪問リハなどの在宅サービスはそれぞれ別々のものとして点在しているイメージしか持てていなかった。しかし、1年目の外科、内科の研修で携わった患者が退院後、施設に入所していたり、在宅で訪問看護を受けていたりして、さまざまなサービスを利用して地域でいきいきと過ごしている様子をこの「地域保健・医療」の研修では見ていくことができた。それぞれのサービスを担う施設やスタッフが点在しているわけではなく、点と点同士が結ばれた線として結ばれていることをイメージすることもできた。またこのサービスは患者の病状や家族や周辺環境の変化により、柔軟性をもって変化していき、患者あるいは住民の現在のニーズに応じたサービスが展開されていることも同時にみていくことができた。これはサービスを担う施設やスタッフが線で結ばれ、網の目を形成しているようなものであると感じた。その網の目が患者・住民の社会的、身体的、精神的要因の変化によって経時的に変化していくような形でのイメージを持つことができた。またサービス内容の変化や柔軟性を生み出すのに重要な役割を果たしているのがケア・マネジャーであるが、その変化や柔軟性をうまく地域住民に反映していく際、地域住民とケア・マネジャーなどのサービス提供側のキーパーソンとの絆が重要であると感じた。

短期間の地域医療研修でも、地域資源の見学や在宅訪問で住民と接する機会はあるが、住民ニーズの変化と対応するサービスの変容を経験するのは困難であろう。1人の住民・患者において、病状、ADL及び要介護度の変化が起こり、ケア・カンファレンスのもとケアプランが修正され実施される。即応性を担保するのは良い連携と良い医師の関与と思うが、このことを理解するには、特定の症例を長期にフォローする必要があろう。また、ケアの質評価は重要な問題と考えるが、住民生活にある程度密着しないと正しく感じるのは難しい。これらの点に関して、当院の研修は優れると考える。

この研修を通じて、地域医療を志す著者にとって、多くのロールモデルと出会うことができた。患者(住民)、家族の視点に立って、診療を進め、多職種との連携を重視されている先生、コメディカルのスタッフ、毎日患者のために朝から晩まで一生懸命に働いている先生方、夜間も休日も患者、家族のために訪問看護をされている訪問看護師の皆さん、その他にも病院、施設、診療所を拠点として、地域包括医療・ケアに携わっている多くのスタッフが今の著者にとっては将来のロールモデルとなっている。

一方、研修の改善点を挙げるとすれば、以下が考えられる。

  1. 1年目の内科、外科での研修中に担当となった患者が在宅に帰り、訪問看護などのサービスを受ける際には訪問看護師に同行したりする機会を増やす。
  2. 地域保健・医療の研修の中で、1年目の研修中に関わった患者(住民)に関して、どのような地域包括医療・ケアにおけるサービスが展開されているかを患者(住民)に同行することで体験していく研修を増やしていく。例えば、1週間の中で訪問看護を受けている場合は訪問看護師と共にご自宅に伺ったり、通所サービスを受けている場合は患者(住民)と共に施設に行きそのサービス内容についての研修を行ったりといった研修内容になる。
  3. 診病連携に重点をおいた研修内容を増やしていく。これは診療所研修の期間をもう少し長くして診療所と病院の連携について学んでいく機会を増やしていくことである。

最後に医師としての最初の2年間をこのみつぎ総合病院で過ごさせていただき、本当によかったと思う。病院、施設、診療所のスタッフ、患者、家族、その他この研修中にお世話になったさまざまな方との出会いが今の筆者を形作っているのではないかと考える。ここでの2年間の研修を忘れることなく、医師としての研鑽を積んで行きたいと考える。

参考文献

  1. 1) 山口 昇:寝たきり老人ゼロ作戦.家の光協会,1994
  2. 2) 川越雅弘:我が国における地域包括ケアシステムの現状と課題.海外社会保障研究 162:4-15,2008
  3. 3) 高橋紘士:特集 地域包括ケアシステムをめぐる国際的動向 趣旨.海外社会保障研究 162:2-3,2008
  4. 4) 青沼孝徳:協力型・協力施設として「地域保健・医療」の包括的研修.地域医療 44(4):474-479,2007
  5. 5) 濱口 實,山下共行,吉澤 徹:地域医療を支えるための新たな構図の第一歩.地域医療 44(1):36-41,2008

研修スケジュール(1年次)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
外科・救急麻酔科
(6か月、公立みつぎ総合病院)
内科
(6か月、公立みつぎ総合病院)

研修スケジュール(2年次)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
精神科
(2か月、府中市立湯が丘病院)
地域保健医療
(3か月、公立みつぎ総合病院及び協力施設)
小児科
(2か月、尾道総合病院)
産婦人科
(1か月、公立みつぎ総合病院 2か月、尾道総合病院)
自由選択
(2か月、公立みつぎ総合病院)

表1.公立みつぎ総合病院研修スケジュール

NST回診の様子
写真1.NST回診の様子
褥瘡回診の様子
写真2.褥瘡回診の様子
6月 回復期リハビリテーション病棟
尾三地域保健所
療養病棟
緩和ケア病棟
7月 保健福祉総合施設
大和診療所
保健福祉総合施設
8月 保健福祉センター

表2.地域保健・医療の研修スケジュール

保健福祉総合施設
写真3.保健福祉総合施設
施設患者への診察(グループホームにて)
写真4.施設患者への診察(グループホームにて)
リハビリテーションカンファランス(リハセンターにて)
写真5.リハビリテーションカンファランス(リハセンターにて)
介護老人保健施設 デイケア、デイサービス実習、入浴介助、移乗・移動介助、利用者診察、NST回診、認知症患者のケア
特別養護老人ホーム 個別作業療法、入浴介助、移乗・移動介助、利用者診察、NST回診、レクリエーションへの参加
グループホーム 買い物、口腔ケア、利用者とのコミュニケーション
リハビリテーションセンター PT、OT、ST実習、介護予防リハビリテーション、運動機能向上リハビリ体験、リハビリテーションカンファレ
ンス

表3.保健福祉総合施設における研修内容

保健福祉センター
写真6.保健福祉センター
健康相談
写真7.健康相談
介護予防事業―口腔機能訓練―
写真8.介護予防事業―口腔機能訓練―

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