栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)


 高齢化を背景に介護が必要な方を中心として栄養面の懸念があります。当院では、入院患者さまの半数近くが低栄養状態にあり、また、寝たきりの患者さまも少なくありません。褥瘡予防の点からも栄養支援の取り組みの意義が高くなっています。一方、疾患や加齢により摂食・嚥下機能の低下したケースは院内・介護施設はもちろん、在宅においても目立つようになっており、これらの領域をカバーする専門職種の役割は院外に広がっています。

 当院では、地域包括ケアシステムのもと、病院、介護施設及び在宅の全ての療養環境を通じて、充実した切れ目ないサポートを提供するため、3つの環境それぞれに対応したチームを設け、各NSTに中核となるメンバーを共有し、3チーム全体をまとめ連携・協働を進めています。
3つのNSTを合わせて地域NSTと捉え、地域全体を活動フィールドとしています。

基本理念

 院内さらに地域において、チーム皆の協力のもと、食と栄養の向上を通じて健康と治療に貢献するとともに、明るい生活を支えるよう努力します。

活動方針

1.積極性 低栄養の徴候、栄養上のリスクがあれば、予防の姿勢で積極的に対応します。
2.チームワーク お互いが職業倫理の鏡と思い、話しやすい相談しやすい仲間として協力します。
3.人間愛とあたたかさ 患者さまとご家族に寄り添い、感情を共有するよう努めます。
4.研修と教育 教え教えられる関係を作り、全国にむけてこつこつレベルアップします。
5.地域社会への貢献 地域医療を担う者として、地域社会に貢献する高い意識を持ちます。

 

NSTのあゆみ

平成14年6月 病院NST準備委員会設置、病院NST発足
平成15年6月 病院NST稼働
平成16年5月 併設介護施設NST準備委員会設置、併設介護施設NST稼働
平成19年2月 在宅NST準備委員会
平成19年4月 在宅NST稼働
平成21年2月 第1回在宅NST勉強会開催(以降1~2回/年実施)
平成27年4月 栄養サポートチーム専門療法士認定教育施設

メンバー構成

医師
歯科医師
薬剤師
看護師(病院、保健福祉総合施設、訪問看護ステーション「みつぎ」)
管理栄養士(病院、保健福祉総合施設、保健福祉センター)
歯科衛生士(病院、保健福祉総合施設)
言語聴覚士(病院、保健福祉総合施設)
理学療法士
作業療法士
保健師(保健福祉センター)
ケアマネジャー(ケアプランセンター「みつぎ」、尾道市北部地域包括支援センター)
ホームヘルパー(ホームヘルパーステーション)

病院NST

介入のタイミング

 血清アルブミン値3.0g/dl以下の症例をリストアップし、病棟単位でアルブミン値の経過を一覧表にして準備します。NST回診の際に、一覧表を参考に新規事例を掘り起こします。また、高齢の整形外科手術例や褥瘡患者は自動的に介入することとしています。とかく遅れがちな介入開始の問題点を皆で認識し、良いシステムづくりで解決するよう取り組んでいます。

咀嚼嚥下を特に大切に

 回診には歯科衛生士と言語聴覚士、摂食・嚥下看護認定看護師が参加し、摂食・嚥下機能への関わりを綿密としています。また、“早期PEG→経口移行のためのリハビリ”にも関与しています。他の職種にとって、事例を通じた知識と経験が増えるほど、摂食嚥下の重要さが実感されます。

退院後の療養環境を念頭に

 介入当初から退院後の療養環境を考慮した計画立案を心掛けます。“病気が治り栄養が少しよくなったら退院でおしまい”ではありません。在宅管理と中間施設での介入も念頭におき、入院中に出来ることを整理する、姿勢は地域包括ケアの理念の実践に非常に大切と考えます。

じっくり対応

 在宅復帰を目標に、ベッドサイドを基本と捉え、患者さまそしてご家族と何度も話し合います。管理方針を在宅につなげるために、好み、食材や調理の条件など、食生活のことにはきめ細かく対応します。また、自宅訪問の実施や訪問看護ステーションとの連携は重要であり、実際に自宅訪問することで、関わるスタッフの新たな学びに繋がります。

会議や院内勉強会の工夫

 細かな課題についても、多職種合同のグループ討議で意見交換し、業務改善を進めています。たとえ経験の浅い人でもしっかり意見が言えるような雰囲気づくりに努めています。勉強会においては、モデル事例の検討を小グループで行うなどして、テーマに応じて聴講型に参加型の要素を加え、新たな学習意欲を刺激するとともに職種間の交流を広げています。

活動実績(令和3年度)

NST回診 延べ件数 1,667件
             介入者数 659人

併設介護施設NST(保健福祉総合施設NST)

 病院でのNST介入者の中には改善不十分な状態で介護施設に入所となる事例もあります。そのため、併設介護施設(施設群を構成しており保健福祉総合施設と称す)においてNSTを稼働し、病院と同じ方針で管理を継続します。
 病院NST医師、管理栄養士を中心として、看護師、介護職員、歯科衛生士及び言語聴覚士が含まれ、低栄養の改善はもちろん、口から食べる楽しみを取り戻せるよう取り組んでいます。
また、退所後の継続管理が必要な方には、ご家族や次の施設に対して情報提供を行います。

活動実績(令和3年度)

NST回診 延べ件数 242件

在宅NST

 患者さまの生活に寄り添い、そのケアのあり方をライフスパンでとらえるように努めます。在宅での計画を個人の栄養ケアの基本とし、地域NSTを挙げて検討に取り組みます。特に入退院の頻繁なケースでは、入院の間にNSTが在宅ケアスタッフと協力し基本計画をきめ細かく修正します。
月1回の在宅NST会議は、病院NST医師、歯科医師、薬剤師、看護師(訪問看護ステーション、病院、併設介護施設)、ホームヘルパー、ケアマネジャー、保健師、管理栄養士、歯科衛生士及び言語聴覚士が参加しています。
 地域住民も在宅NSTの一員と捉え、独居高齢者、老老介護など社会的要因による低栄養リスクにも介入ができるよう、食生活研究グループといったボランティア並びに民生委員の方々と連携を図っています。

在宅NST勉強会

 周辺地域のケアスタッフの皆様と連携を深め、さらに広く住民の方へ低栄養の問題と支援の必要性の啓蒙を図るため在宅NST勉強会を企画しています。食や栄養に特に興味をお持ちの方、日頃の在宅介護にお悩みの方は、是非ご参加下さい。お待ちしております。
平成30年度 在宅NST勉強会
 第11回在宅NST勉強会(平成30年10月28日)
テーマ『今から始めよう サルコペニア予防~豊かなアクティブライフのために~』
一般住民を対象に、筋力測定や運動、栄養相談などを行いました。
      

認定

  • 日本臨床栄養代謝学会NST稼動施設
  • 栄養サポートチーム加算施設
  • 日本臨床栄養代謝学会栄養サポートチーム専門療法士認定教育施設

資格

  • 日本臨床栄養代謝学会 終身指導医
  • 日本臨床栄養代謝学会 認定医
  • 日本臨床栄養代謝学会 NST専門療法士
  • 摂食・嚥下看護認定看護師