私は、2021年4月1日に尾道市立総合医療センター公立みつぎ総合病院の院長に就任いたしましたのでご挨拶申し上げます。
当院は、「地域包括ケアシステム」発祥の病院として広く我が国に認知されています。
2005(平成17)年の介護保険法改正で「地域包括ケアシステム」という用語が初めて使われました。2011(平成23)年の同法改正では、条文に「自治体が地域包括ケアシステム推進の義務を担う」と明記され、システムの構築が義務化されています。厚生労働省は地域包括ケアシステムを「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と定義し、高齢化社会におけるわが国の指針としています。どの地域に住む人も、どの年代の人も、安心して暮らせる地域を構築することが地域包括ケアシステムの目標であろうかと思います。
公立みつぎ総合病院は医療を中心として、介護を保健福祉総合施設、保健・福祉を保健福祉センターと、3施設が有機的に機能し、御調町を中心に周辺の尾道市北部、三原市、府中市、世羅町の医療圏の地域包括ケアを担っております。地域の2次救急はもとより、広島県より「広島県リハビリテーション支援センター」の指定を受け、県内の日常生活圏域における地域リハビリテーション広域支援センター・サポートセンターへの支援、実地研修や専門職派遣、研修会開催、各関係機関との連絡・調整などを行い、広島県全体における地域包括ケア体制の推進を担っています。また、6床と小さいながらも緩和ケア病棟を有し、病院機能評価認定を受けており、緩和ケアも地域包括ケアの一部として在宅支援・診療を務めております。
中山間地域や離島では、都会よりも深刻な高齢化が進み、まさに人口構成が逆三角形となっています。その地域にも人々の日々の暮らしがあります。その地域を愛する人々の医療や福祉を考えることはもちろんのことですが、日々の生活が成り立たなくてはいけません。地域包括ケアシステムを完成させるためには、食を含めた日々の暮らし、生活互助を含めた地域のコミュニティー作りが必要です。
地域包括ケアシステム発祥の当院が、どれだけ地域に根付いた医療・福祉・介護・生活の場を提供できるかがこれからのわが国の社会の成否に関わると思っています。当院では全国に先駆けて地域包括ケアシステムを行ってきましたが、未だ十分の成果を達成しているとは言えません。病院機能を充実し、IT化を含めてそれぞれが連携を有効化し、チーム医療を推進し、健康年齢を延長するという目標を達成しなければなりません。また、昨今の水害や、新型コロナウィルス禍などにも強い医療体制・地域を作る必要もあります。本院を核として、御調町が「わが国で最も住みたい町」になるように、尾道市・当院職員が一丸となって、住民の方々とコミュニケーションを取りながら、この問題に取り組みたいと思っています。
地域の皆様に愛され頼られる病院、各職種の職員が誇りをもって活躍できる病院を目指して研鑽していく所存ですのでどうかよろしくお願いいたします。