山口 昇先生は、一言で言うならば、「地域包括ケアシステム」の生みの親、名付け親、育ての親である。
2014年(平成26年)6月18日「地域における医療及び介護の総合的な確保の推進に関する法律」(いわゆる医療・介護総合法)が成立し、2015年(平成27年)から各日常生活圏域における地域包括ケアシステムの構築がいわば法制化された。このことが発端となり、全国津々浦々に「地域包括ケアシステム」が認識されはじめた。それよりさかのぼること、30数年前に、「地域包括ケアシステム」と命名し発展させ、実践・指導し続けているのが山口昇名誉院長・特別顧問である。

山口名誉院長・特別顧問の足跡(地域包括ケアシステムの成り立ち)

第1段階 寝たきりゼロ作戦(1974年〜)

1966年(昭和41年)、当院(当時御調国民健康保険病院)に着任した山口昇医師(外科医)は精力的に手術を行った。しかし、一旦退院した患者が半年から1年後に褥瘡や寝たきりが原因で再入院してくるようになった。思案の結果、病院での診療だけではこの問題は解決しないことに気づき、午後から定期的に在宅に出向く出前医療(医療の出前)(現在の訪問診療、訪問看護)を1974年(昭和49年)から開始した。いわゆる、「寝たきりゼロ作戦」の始まりである。

第2段階 医療と保健・福祉(行政)のドッキング(1984年〜)

1974年(昭和49年)から当院が出前医療(医療)を開始したため、1957年(昭和32年)からすでに始まっていた町役場からの保健師訪問(保健)と医療が在宅においてバラバラに提供される形となった。不都合解消のため1979年(昭和54年)から町役場の保健師とは別に病院保健師を配置し、保健(予防)と医療を連携させた。1984年(昭和59年)には町長・町議の賛同を得て町役場の保健・福祉部門を病院に統合・吸収し国保健康管理センター(所長は山口病院長)を開設した(行政とのドッキング)。1997年(平成9年)には健康管理センター、訪問看護ステーション(1992年(平成4年)に開設)、ホームヘルパ
ーステーションなどで構成される御調保健福祉センターを病院の隣に合築した。

第3段階 介護施設群の併設(1989年〜)

広島県が御調町内の山の中腹部に約4.8haの敷地を開き、県立「ふれあいの里」とした。まず、1984年(昭和59年)に特別養護老人ホームとリハビリテーションセンターが開設され、当院から医師などのスタッフが派遣された。計画では県立の老人病院や老年研究所を併設する予定であったが結局計画は頓挫した。訪問事業を展開していた当院としては、当時在宅支援のために介護施設が必要になっていた。そして、県の許可のもと1989年(平成元年)、介護老人保健施設「みつぎの苑」が80床で開設され、ケアハウス、グループホームなどを順次開設していき、現在の保健福祉総合施設に至っている(介護施設群の併設)。

(文責:公立みつぎ総合病院長 沖田 光昭)

経歴

山口 昇(やまぐち のぼる)略歴

1933年 長崎市に生まれる
1957年 長崎大学医学部卒業
1962年 長崎大学大学院医学研究科修了(外科学、医学博士)
1966年 公立みつぎ総合病 院長(当時は御調国保病院長)
1996年 御調町保健医療福祉管理者
2003年 公立みつぎ総合病院 病院事業管理者(公営企業法全部適用)
2012年 公立みつぎ総合病院 名誉院長・特別顧問

社会活動歴

  • 老人保健福祉審議会委員、公衆衛生審議会委員、医療保険福祉審議会委員、中央社会福祉審議会委員、医道審議会医師臨床研修検討部会委員、社会保障審議会介護給付費分科会委員をはじめ厚生労働省の各種検討会委員を歴任
  • 病院長に就任以来50年間、病院づくり、地域づくりに尽力。在宅ケアによる“寝たきりゼロ”をめざし(1974年我が国ではじめて実施)、保健・医療・介護・福祉の連携による地域包括ケアシステムを構築して地域ぐるみのケア体制をつくり上げ、その結果寝たきり老人を3分の1に減らす。介護保険制度創設に研究会・審議会委員として当初より関与。1984年当時の厚生省に対し、地域包括ケアシステムの必要性を提言
  • 現在は全国国保診療施設協議会名誉会長(元会長)、全国老人保健施設協会名誉会長(元会長)、新医師臨床研修制度における医師臨床研修マッチング協議会運営委員、自治医科大学客員教授

賞罰

  • 厚生大臣表彰 1986年
  • 朝日社会福祉賞 1991年
  • 読売医療功労賞 1999年
  • 藍綬褒章 1989年
  • 叙勲(瑞宝重光章) 2003年
  • 山上の光賞 2018年

主な著書

  • 「実録 寝たきり老人ゼロ作戦」
    地域包括ケアシステムの構築をめざして~公立みつぎ総合病院45年の軌跡
    (株式会社 ぎょうせい・2012年3月24日)
  • 『寝たきり老人ゼロ作戦』(家の光協会出版・1992(平成4)年5月)
  • 特集 人口減少時代の病院【病院としての将来像:公立みつぎ総合病院】
    『早くから高齢化に対応してきた病院として』
    (医学書院・病院2008年8月1日)
  • 明日の在宅医療第1巻在宅医療の展望 共同編者、共著
    『在宅医療と地域包括ケアの展開-公立みつぎ総合病院の実践』
    (中央法規・2008年9月1日)
  • 最新介護福祉全書「医学一般」責任編集
    (メヂカルフレンド社.第4版第1刷発行・2008(平成20)年12月)
  • 「地域包括ケアシステム~地域包括ケアシステムが体系的にわかる」共著
    (株式会社 オーム社・2012(平成2)4年3月20日)